[読書] ジョブ理論
#ジョブ理論
#経営学
#組織論
#要求分析
読んだ本
ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ハーパーコリンズ・ノンフィクション) |
モチベーション
- エンジニアリング組織論への招待の感想をまとめたとき、他の人の感想のどこかでこれも良書というのをみた
- (エンジニア視点で?)経営側の基本的な考え方、ビジネスモデル、マネタイズの概要知識がほしかった。
- よいコードを書く/よいプロダクトをつくるにはいくらでも時間がかけられる(リファクタリング、品質向上、性能改善、前提OSや言語・ライブラリの最新バージョン対応...)
- が、ビジネス面で求められている要求とのトレードオフで考えなければ行けない場面が多々。
- トップダウンで降りてくる指示をただ受け入れたり、ただ批判したりする前に、全員が共通で目指すべきものの軸となる考え方を知りたかった。
- 業務の中でプロダクトの検討などをする機会があり、参考になる考え方のスタディをしたかった。
- 「イノベーションのジレンマ」の人ということで既にしっている本の著者でとっつきやすそう?
かかった時間など
- 期間:2022/4/1 〜 2022/8/15
- 読書時間: 不明 (楽天Koboの読書時間記録機能が消えて、わからなくなりました...)
ざっくりと理解したこと
- イノベーションは運任せではなく理由がある。大量のデータから相関性を見出すだけではイノベーションは起こせない
- なんのジョブを片付けるためにその商品、サービスを雇用するのかを考えべき。
- ジョブは、顧客のアンケートやインタビューで得られるニーズとはある意味で違うもの。顧客を注意深く観察して、文脈をとらえること。
- ジョブは機能的側面だけでなく、感情的、社会的側面からも存在しうる。ジョブを解決できる手段が他になければ、顧客は高い対価を支払うことを厭わない
- ジョブを見つけただけではダメで、ジョブを解決することにフォーカスした組織を構成する必要がある。
- ジョブにフォーカスした組織は、各部者、社員が自発的に判断した行動を促すことができる。
- 組織がジョブにフォーカスされると他の会社には簡単に模倣できなくなる
- イノベーションのジレンマにみるように、組織がジョブにフォーカスできなくなる理由は大量にある。たとえば指標や株主にみせるデータなど。ジョブを見失わなず、共通の指標をもつことが大事。
書いてあることの要約
第一部: ジョブ理論の概要(序章〜3章)
- もっとも重要な問いは「どんなジョブを解決したくて、その商品を雇用したのか」
- ミルクシェイクのジレンマ:
- 客層の典型的な人にアンケートをとって、その回答をもとに改善してみたが、変化がなかった
- アンケートをやめて、「来店した顧客の生活におきたどんなジョブが、店に向かわせ、ミルクシェイクを雇用したのか?」を考えた
- 朝の時間はそれぞれ一人で買っていくことがわかり、ヒアリングすると、朝の通勤の渋滞に退屈な時間を潰し、腹を満たすために買っていくことがわかった。
- 夕方は、子供にyesの返答をしてあげたいというジョブを満たすためにあった。
- 同じファストフード店で、同じ商品でも、解決したいジョブは違う。ちょうどいい量も、解決したいジョブによって違うので、統一した量しか出さなければ、帯に短しタスキに長しでどっちのニーズも満たせない
- ジョブの定義:「顧客は、商品を買うのではなく、「進歩」するために生活に引き入れる。この進歩のことをジョブと呼ぶ。
- 解決策は、特定のコンテキスト(いつだれがなにをしているときなど片付けるべきジョブ理論の根幹)にのみもたらすことができる
- ジョブは日々の生活の中で発生するので、その文脈を説明する状況が定義の中心にくる
- 片付けるべきジョブは、たくさんあるジョブのうち、継続して反復するもの
第二部: ジョブ理論の奥行きと可能性(4章〜6章)
- ジョブハンティングガイド
- 生活に身近なジョブを探す
- 無消費と競争する
- 間に合わせの対処策
- できれば避けたいこと
- 意外な使われ方
- ドキュメンタリー動画風のように顧客が進化をもとめ、苦悩する瞬間を通じてストーリーをとらえる
- 機能面だけでなく感情面に注目した顧客の文脈=コンテキストが大事
第三部: 「片付けるべきジョブ」の組織(7章〜10章)
- ジョブ中心に組織をつくる
- イノベーションのジレンマ:企業は3〜5年に一度は組織改革をしたがるが、たいていうまくいかない
- その理由づけが、現在の業績への不満からだから。大抵組織の再編成は、お互いの駆け引きの中で、財務の整理や指揮系統を変えるだけ。
- ジョブのレンズを通すと、満たすべきジョブを中心に組織構造を考えることができる。この差は大きい
- ジョブが解決できているかを測る方法をあらかじめ埋め込んでおく
- イノベーションのデータの3つの誤謬
- 能動的データと受動的データの誤謬
- 集まりやすい能動的データに、管理者は職業柄反応してしまう
- プロダクトが売られ出すと、それに対応する販売データ=能動的データが生まれる。受動的データは弱まりやすくなる
- 見かけ上の成長の誤謬
- 投資後の株主からの圧力。他社のやり方。ターゲット顧客を増やすために複数のジョブを解決しようと手を出す。手っ取り早い見かけ状の成長が見えるようにしたがる
- 確証データの誤謬
- データは確認したい観点に自らを同調させる
- 営業、マーケティング部門、研究開発部門、中間管理職それぞれが都合の良いデータを持ってくるが、どれもバイアスがかかっており、顧客のジョブがフォーカスされていない
- 経営陣が片づけたいと思うジョブの方向に決断は歪められ、自分達が売りたいプロダクトを顧客がもとめていると思いたがる。そのデータも出すことは出来、客観的にはならない
- 能動的データと受動的データの誤謬
感想
- プロダクトを作る上で、優先度をきめたり、各自が自主的に動いたりするための基準となる考え方で、かなり大事な本とおもった。
- ジョブを見つけるのに、「何を問いかけるかが大事」というのは、今のトレンドっぽいと思った
- 書籍であげられた成功事例で実感が湧く。自分自身もなにかモノを買うときに「競合他社の製品をいろいろみて見るべき場合」と、「ジョブを解決してくれるなら、他と比べるまでもない」と思える感覚はたしかにある
- お試しの際に、他の製品のセールスやログインの手順を増やすやり方の話面白い。経営に違和感を感じるやり方の一例として挙げられていたが、これがなぜだめかがちゃんと説明できる。
今後の展望など
- プロダクトを考える上でも、受託の開発案件でも、そもそもの顧客が満たしたいことの背景・文脈を捉えることがやはり大事。意識して進められるようにしたい。
- どの程度この本と話がつながるかわからないが、次はアジャイル開発関連の本と、「LeanとDevOpsの科学」あたりを読みたい。
最終更新日: December 31, 2022